こんにちは。『行動競馬学』の管理人、Rです。
競馬の予想をしていると、新聞やWebサイトで必ず目にするのが調教や時計に関する情報ですよね。特にレース直前になると、あの馬の仕上がりがどうのこうのと話題になりますが、正直なところ、競馬の追い切りとはどういう意味なのか、初心者の方にとっては見方がよくわからないことも多いかなと思います。
タイムが速ければいいのか、それとも別の評価基準があるのか。調教の時計や記号が並んでいるのを見ると、なんだか暗号みたいで難しく感じてしまうかもしれません。でも、追い切りの意味や正しい見方を知ることで、馬の調子や適性を自分なりに評価できるようになり、予想の楽しさがグッと広がりますよ。
この記事では、競馬の追い切りとは何かという基本的な意味から、コース別のタイムの目安、そして競馬新聞の調教欄から馬の本当の状態を読み解くコツまで、わかりやすく解説していきます。
- 追い切りの基本的な意味とレースに向けた目的
- コースごとの特徴と基準となるタイムの目安
- 単走や併せ馬、脚色から読み取れる馬の状態
- 競馬新聞の調教欄を活用した実践的な評価方法
競馬の追い切りとは?基本知識と目的
まずは、追い切りの基本について整理していきましょう。競馬新聞を見ていると当たり前のように使われている言葉ですが、その裏には馬の生理学的なメカニズムや、トレセン(トレーニング・センター)のスケジュールなど、色々な要素が絡み合っています。ここでは、なぜその日、その時間に行われるのかといった背景も含めて解説しますね。

追い切りの意味とレース前の役割
競馬の「追い切り(おいきり)」とは、レースに出走する直前の週(当週)に行われる、速いタイムを出して強い負荷をかける最終段階の本格的な調教のことです。
レース本番に向けて、競走馬の身体的なキレや精神的な状態をピーク(最高潮)に持っていくために、しっかりと負荷をかけて「追い切る」ことからこの言葉が使われるようになりました。人間のアスリートで言えば、大きな大会の直前に行う最終リハーサルのようなものですね。
ただ、ここで誤解してほしくないのは、単に一番速いタイムを出すことだけが追い切りの目的ではないということです。競馬を始めたばかりの頃は「時計が速い=絶好調だから買い!」なんて単純に考えてしまいがちですが、実はもっと奥が深いんですよ。
追い切りの本当の目的と役割
- レース当日に向けた、馬体の微調整とコンディションの最終確認
- 心肺機能に適度な刺激を与え、本番に向けた「闘争心のスイッチ」を入れる
- 騎乗者の指示に対する反応(ハミ受けや折り合い)がスムーズかのチェック
馬は言葉を話せませんから、この最終追い切りでの「フットワーク(脚さばき)」や「息の入り方」が、現在の状態を知るための最も信頼できるバロメーターになります。タイムという表面的な数字だけでなく、馬自身のやる気やストライドの伸び具合、さらには走るフォームのバランスなどを総合的に評価するための重要なプロセスなんです。
そして、この追い切りでの僅かな変化や動きの良し悪しを見極めるのが、トレセンで取材をしている競馬記者(トラックマン)たちの腕の見せどころでもあります。競馬新聞に載っている「調教短評」や「解説」などは、ただストップウォッチの数字を追っているだけではなく、馬の表情や活気といったプロならではの細かな観察をベースに書かれています。
業界用語「追い日(おいび)」
各陣営が一斉にこの本追い切りを行う日のことを、競馬業界ではよく「追い日」と呼びます。この日のトレセンは、週末のレースに向けた独特の緊張感と熱気に包まれていて、メディアにとっても一番の書き入れ時になるんですよ。
追い切りが水曜日や木曜日の理由
中央競馬(JRA)のレースは基本的に週末の土曜日と日曜日に行われますが、追い切りはなぜか水曜日か木曜日に集中していますよね。競馬新聞を眺めながら、「一番調子を上げたいなら、レース直前の金曜日に速い時計を出せばいいのでは?」と疑問に思ったことはありませんか?
実はこれには、馬の生理学やメンタルケア、そしてトレセンのスケジュールが複雑に絡み合った、すごく理にかなった理由があるんです。JRAのトレーニング・センター(栗東・美浦)は月曜日が全休日に設定されているため、馬たちは火曜日から徐々にペースを上げていきます。その中で、水・木曜日に一番強い負荷(本追い切り)をかけるのには、大きく分けて3つの重要な目的があります。
1. 疲労回復のメカニズム(超回復の期間)
私たち人間が激しい筋トレをした後と同じで、馬も限界に近いスピードで走ると筋肉痛になりますし、血中には乳酸などの疲労物質が溜まります。もしレースの前日や前々日に極限まで追い込んでしまうと、この疲労が完全に抜け切らないまま本番を迎えることになってしまいます。
筋肉に疲労が残った状態で全力疾走すれば、後半の直線でパフォーマンスが落ちるのは当然ですし、何より致命的な故障(ケガ)のリスクが跳ね上がってしまいます。筋肉をしっかり休ませて修復し、より強い状態へとピークを持っていくためには、最低でも中2〜3日というリカバリー期間がどうしても必要になるわけです。
2. 体調管理とトラブル時のモニタリング期間
強い負荷をかけた直後というのは、馬の体調が急変しやすいデリケートなタイミングでもあります。追い切った後の数日間、馬の「朝飼葉(あさかいば:朝のご飯)」の食いや排泄物、歩様に違和感はないかなど、厩舎スタッフが注意深く観察する猶予が必要です。
競馬用語で「かいばがあがる」と言いますが、過度なストレスで食欲不振に陥ってしまう馬もいます。水曜日に追い切っておけば、仮に木曜日に疲れが見えても、金曜日に軽い運動にとどめるなどの微調整が効きますよね。レースまでに軌道修正するためのバッファ(ゆとり)を持たせている、というリスクマネジメントの意味合いも大きいんです。
3. 精神的な落ち着き(折り合い)を取り戻すため
競走馬は私たちが想像する以上に賢く、闘争心の強い生き物です。激しい調教をすると「いよいよレースだ!」と本能のスイッチが入り、極度の興奮状態に陥ってしまいます。
この闘争心がむき出しの状態でレースに向かうと、道中で騎手の指示を無視して暴走してしまったり(かかり気味になる)、無駄なスタミナを消費してしまいます。レースまでに数日間のインターバルを置くことで、一度高ぶった精神をクールダウンさせ、本番で騎手と呼吸を合わせて冷静に走れる(折り合いがつく)状態へと導くことができるんですよ。
水曜日と木曜日の違いって?
全体の傾向として水曜日追い切りが主流ですが、木曜日に追い切る馬も一定数います。土曜日出走の馬が木曜日に追い切ることは稀ですが、「日曜日に出走するからスケジュールを1日スライドさせている」「前走のダメージが大きく、疲労回復のための引き運動を1日長くとった」など、馬の個性やその時の体調に合わせた陣営のさじ加減が反映されています。新聞を見る時は、「なぜこの馬は木曜追いなのか?」と想像してみるのも予想の醍醐味かなと思います。

早朝に調教が行われる理由
トレセン(トレーニング・センター)の朝は、私たちが想像する以上に早いです。グリーンチャンネルや競馬番組などで追い切りの映像を見たことがある方なら、「なんでまだ真っ暗なうちから走っているんだろう?」と不思議に思ったことがあるかもしれませんね。
季節によって多少の変動はあるものの、基本的には太陽が昇る前から調教がスタートします。これには、競走馬という動物特有の生態と、大規模な施設ならではの事情が大きく関係しているんです。
最大の理由は「馬は暑さにとても弱い」から
馬は寒さには比較的強い反面、暑さにはめっぽう弱い動物です。500キロ近い巨体が猛スピードで走ると、筋肉から膨大な熱が発生します。体温が上がりすぎると大量の汗をかいて体力を著しく消耗し、最悪の場合は熱中症や夏バテ(夏負け)を引き起こしてしまうリスクがあります。
そのため、特に夏場は、1日のうちで最も気温が低い早朝のうちに一番負担のかかる激しい運動を終わらせておく必要があるんですね。
冬でも早起きなのは「習慣性」のため
「それなら、冬はもっとゆっくり始めればいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、馬は「習慣性の生き物」であり、日々のルーティンが崩れることを極端に嫌うデリケートな一面を持っています。
暑い夏を基準に作られたタイムスケジュールや生活リズムに順応しているため、真冬であっても基本的には早い時間帯から活動を開始します。もちろん、コースの凍結リスクなどもあるので少し時間はズレますが、それでも私たち人間の感覚からするとかなりの早起きですよ。
| 季節 | 調教実施時間(目安) | 背景と理由 |
|---|---|---|
| 夏期 | 午前5:00 ~ 午前9:30 | 日中の危険な気温上昇を避けるため、1年で最も早く調教が開始される。 |
| 春・秋期 | 午前6:00 ~ 午前10:30 | 激しい寒暖差を考慮しながら進められる、トレセンの標準的なスケジュール。 |
| 冬期 | 午前7:00 ~ 午前11:30 | コースの凍結リスクや馬の筋肉の硬直を避けるため、やや遅めのスタートとなる。 |
数千頭の馬が渋滞しないためのスケジュール
さらに、物理的な制約もあります。トレセンには常時2000頭を超えるような膨大な数の競走馬が在籍しています。これだけの数の馬が全員安全にコースを使うためには、早朝から順番にどんどんコースを回していくしかありません。
もしゆっくりスタートしていたら、最後に追い切りをする馬の順番が回ってくる頃には、すっかり日が昇って気温が高くなってしまいますよね。
また、走った後には、息を整えるクーリングダウン、馬体の洗浄、脚元に熱や腫れがないかの入念なチェック、馬房(馬の部屋)の掃除、そして朝の飼葉の準備など、厩舎スタッフがやるべき仕事が山積みです。馬のケアを最優先に1日のスケジュールを逆算していくと、必然的に早朝スタートにならざるを得ないというわけです。
あえて「午後」に調教するレアケースも?
基本は早朝に調教が行われますが、休養明けなどでどうしても体重が落ちにくい馬の場合、わざと気温の高い時間帯(午後など)に運動させて汗をかかせ、「馬体重を絞る」という工夫がされることもあります。また、北海道などの寒冷地では、朝の冷え込みが厳しすぎるため、気温が上がる午後に調教をズラすケースもあるんですよ。例外を知っておくと、より競馬の奥深さが感じられるかなと思います。やることが山積みなので、早朝スタートは必須なんですね。
一週前と最終追い切りの役割の違い
追い切りを評価する上で、ここはすごく大事なポイントです。「一週前追い切り」と当週の「最終追い切り」では、求められる役割が全く違います。
現代の競馬で理想とされているプロセスは以下の通りです。
一週前追い切り:
肉体的な限界に近い強い負荷をかけ、しっかりと馬体を仕上げる。
最終追い切り(当週):
やりすぎないように微調整にとどめ、心身のバランスを整える。
直前で速い時計を出しすぎると、調教の段階で体力のピークが来てしまったり、馬が興奮しすぎてレースで騎手の言うことを聞かなくなってしまう(前に行きたがってしまう)危険があります。
タイムの鵜呑みは危険!
最終追い切りのタイムが遅いからといって、調子が悪いとは限りません。一週前にしっかり時計を出していて、当週はあえて軽く流しているだけ、という意図的なピークコントロールの可能性も高いです。必ず両方をセットで比較することが大切ですよ。
馬なりや強めなど脚色の意味と強さ
調教タイムの横には、「馬なり」や「一杯」といった言葉が書かれていますよね。これは「脚色(あしいろ)」といって、騎乗者が馬に対してどれくらいの強さでアプローチしたかを示すものです。これを知らないと、タイムの本当の価値がわかりません。
馬なり(うまなり)
騎乗者が手綱を強く押したりムチを入れたりせず、馬の自発的な走りに任せている状態です。
もし「馬なり」なのにすごく速いタイムが出ていたら、それは馬にまだ余裕があり、心肺機能が高くて絶好調であるサインと言えます。
強め(つよめ)
最後の直線で、騎乗者が数秒間手綱をしごいたりして「強く」加速を促した状態です。馬なりよりも負荷がかかっており、レースに向けて気合いを乗せたい時によく使われます。
一杯(いっぱい)
限界まで目一杯に追い出している状態です。手綱を激しくしごき、ムチも何発か入るような実戦さながらの追い方です。普通は一番速いタイムが出ますが、「一杯に追っているのにタイムが遅い」「ラストでバテている」ような場合は、まだ仕上がっていないか、体調が良くない可能性があります。
厩舎によっては「追い切りは基本的に馬なりでしかやらない」という方針のところもあるので、「一杯だから良い、馬なりだからダメ」と単純に決めることはできません。過去の調教と比べてどうなのかが重要です。

単走と併せ馬の違いとコース取り
追い切りには、1頭で走る「単走(たんそう)」と、他の馬と一緒に走る「併せ馬(あわせうま)」の2パターンがあります。
単走:
気性が荒く、他の馬が横にいるとムキになって走りすぎてしまう馬によく使われます。自分のリズムで走らせて、折り合い(落ち着き)をつけるのが目的です。
併せ馬:
2〜3頭で並んで走る調教です。馬の「負けたくない」という闘争本能を引き出す効果があるので、まだレースに慣れていない新馬などは、ほとんどが併せ馬で行われます。競り合う分、自然と速いタイムが出やすくなります。
併せ馬の「コース取り」に注意!
トラックコース(円形のコース)で併せ馬をする場合、外側を走る馬の方が、内側を走る馬よりも長い距離を走らされることになります。
もし内側の馬が先着しても、それは「外の馬が長く走ってくれたから」かもしれません。逆に、外側を大きく回りながら内側の馬と同入(同時にゴール)したり先着したりする馬は、かなり能力が高いと評価できます。新聞の「内・中・外」という表記には、そんな力学が隠されているんです。
競馬の追い切りとは?タイムの見方と評価
ここからは、より実践的なデータのお話です。追い切りのタイムは、走るコースの性質によって全く意味が変わってきます。坂路(はんろ)とウッドコース、それぞれの特徴とタイムの目安を頭に入れておくと、予想の精度が一段とアップしますよ。

坂路コースの特徴とタイムの目安
調教タイムを読み解く上で、その時計が「どこで」出されたものなのかを知ることは絶対に欠かせません。中でも、競馬予想において非常に重要視されているのが「坂路(はんろ)コース」での追い切りです。
坂路とは、その名の通り傾斜のついた直線を駆け上がるトレーニング施設のことです。平坦なトラックコースを走るのに比べて、脚元(蹄や関節)への着地衝撃を和らげつつ、馬の前躯(ぜんく)や後躯の筋肉群に強烈な負荷をかけることができます。
私なりに坂路のメリットを一言で言うと、「ケガのリスクを抑えながら、心肺機能とパワーを限界まで鍛え上げることができる」という点かなと思います。そのため、休み明けで少し馬体が太めな馬の減量目的や、スタミナの底上げを狙う陣営に多用される傾向がありますよ。
東西のトレーニング・センター(トレセン)の違い
JRAの競走馬は、滋賀県の「栗東(りっとう)」か、茨城県の「美浦(みほ)」のどちらかに所属しています。それぞれの坂路コースは構造や高低差が全く異なるため、タイムの価値も別物として考える必要があります。
栗東の坂路コース(関西馬の拠点)の特徴
長年、数々の名馬を鍛え上げてきた栗東の坂路コース。全長は1085mで、タイムが計測されるのは後半の800m(4ハロン)区間です。全体の高低差は32mにも達し、ゴール前に向けて息が上がる過酷なレイアウトになっています。
栗東坂路の最大の特徴であり、タイムを見る上で知っておきたいポイントは、計測スタート地点の前の「助走区間」がわずか70mしかなく、そこですでに傾斜が始まっているという点です。
平坦な場所から勢いをつけてスタートできるわけではないため、最初の1ハロン(200m)でスピードに乗るのが非常に難しい構造なんですね。だからこそ、ここを基準に馬の能力を測ることができます。
- ダッシュ力の証明: 傾斜が始まっている最初の1ハロン目で「13秒台」をスッと刻める馬は、出足のセンスやダッシュ力が優れていると評価できます。
- パワーとスタミナの証明: 傾斜が最もキツくなる過酷な後半2ハロン(400m)を「25秒未満」で駆け上がれる馬は、坂を克服する強靭なパワーと最後までバテないスタミナを兼ね備えています。
美浦の坂路コース(関東馬の拠点)の劇的な進化
少し前までの競馬ファンの中には、「美浦の坂路は栗東に比べて傾斜が緩いから、関西馬の方が強い(西高東低)」というイメージを持っている方も多いかもしれません。実際、かつての美浦坂路は高低差が18mしかなく、負荷の軽さが課題として議論されていました。
しかし、2023年の秋、この状況は完全に過去のものとなりました。美浦トレセンで、前例のない規模の大規模な土木工事(大改修)が行われたからです。
なんと地下25mの深さまで巨大なコンクリート構造物を埋め込み、約660mの新しい坂路を元のコースに繋ぎ合わせるという大手術が敢行されました。これにより、美浦の坂路は驚くべき進化を遂げたんです。
| 項目 | 新・美浦坂路(2023年10月〜)のスペック |
|---|---|
| 全長・計測区間 | 全長1200m / 計測区間800m(ここは以前と変わらず) |
| 高低差 | 33m (かつての18mから激増し、栗東を1m上回る) |
| 勾配の構造 | スタート直後から2.0%の勾配が約180m続き、その後は3.0%の傾斜が約810m続く |
| 安全性への配慮 | ゴール位置を50m手前に移し、走った後の減速区間を210mへ大幅延長 |
過去の美浦坂路のタイム基準は通用しません!
今や美浦の馬たちも、日常的に栗東と同等、あるいはそれ以上の強烈な負荷を経験できるようになりました。以前のように「平坦なスタートから楽にスピードを出せる」コースではなくなったため、昔の美浦坂路の基準タイムをそのまま当てはめて評価するのは非常に危険です。タイムの評価基準は根本からリセットして考える必要があります。
このように、坂路コースと一口に言っても、東西で全く別の顔を持っています。新聞の調教欄を見る時は、単純な全体時計の速さだけでなく、「栗東特有の短い助走でどうラップを踏んだか」「新生・美浦坂路の過酷な傾斜を最後まで耐え抜けたか」という視点を持つと、予想がさらに面白くなりますよ。
ウッドコースの特徴とタイム基準
ウッドチップコースは、ダートの上に木片を敷き詰めたコースです。クッション性が高くて脚元に優しく、しっかりと時計を出すことができます。スタミナの養成にぴったりです。
栗東CW(ウッドチップコース)
距離が長く、継続的な負荷をかけることができます。
一般的な基準タイムの目安としては、6F(約1200m)が平均82.9秒です。
もし一杯に追って、6Fで80秒台といった基準より2秒以上速い時計が出た場合は、かなり優秀な仕上がりと言っていいでしょう。
美浦W(ウッドチップコース)
2019年に大改修され、非常に広くてスピードが出やすいコースに生まれ変わりました。現在、美浦の新馬戦前の追い切りの約7割がここで行われています。
基準タイムは5Fが67.8秒くらいですが、ここから3秒以上速く走り、さらにラスト1F(最後の200m)で11秒台を叩き出すような馬は、スピードもスタミナも文句なしの最高評価になります。
走る位置によるタイム差
競馬新聞には、コースのどこを走ったかが「1〜9」の数字で載っています。数字が小さいほど内側です。1と9では、6F走った場合にタイムで1.5秒ほどの差が出ると言われています。タイムだけ見て「遅い」と思っても、大外を回っていたら実はすごい内容だったりするわけです。

新馬戦における基準タイムと見方
過去のレースデータがない新馬戦(メイクデビュー)において、追い切り時計は馬の素質を測る一番の頼りになります。
どの陣営も「まずはレースで走れる体を作る」という目的が一致しているため、調教タイムとレースの着順がはっきりと連動しやすいんです。
| コース | 新馬戦勝利 基準ラップ (ラスト3F – 2F – 1F) | 評価のポイント |
|---|---|---|
| 栗東 坂路 | 54.0秒 – 25.0秒 – 12.3秒 | 全体時計より「終い重視」。ラスト2Fを25秒未満、ラスト1Fを12秒台前半で鋭くまとめることが重要。 |
| 栗東 CW | 67.7秒(5F) – 37.7秒 – 11.6秒 | 11秒台中盤の絶対的なスピードが要求される超高速化の傾向。 |
| 美浦 W | 67.7秒(5F) – 38.0秒 – 11.8秒 | 改修後スピードが出やすい。ラスト3Fを37秒台、ラスト1Fを11秒台でまとめるのが好走パターン。 |
| 美浦 坂路 | 54.1秒 – 25.4秒 – 12.4秒 | 改修により「ラスト2F」の時計が着順と強く連動。ここを25秒台で走れるかが鍵。 |
新馬戦を買う時は、これらの基準タイムを満たしているかどうかをぜひチェックしてみてください。特に最後に向かってタイムが速くなる「加速ラップ」を踏めている馬は、バテずに最後まで伸びる力を持っている証拠です。
競馬新聞の調教欄の読み解き方
競馬新聞の調教欄には、予想に使えるヒントがたくさん隠されています。表面的なタイムだけでなく、いくつかの視点を持つことで、より深く馬の状態を探ることができます。
1. 過去の自分との比較(自己ベスト)
新聞には「自身のベストタイム」が載っています。これを更新している場合は、馬が成長しているか、絶好調であるサインです。また、前走で好走した時のタイムと比較して、同じくらい負荷をかけられているかを確認しましょう。
2. 乗り役の体重(斤量)を考慮する
見落とされがちですが、「誰が乗っていたか」はすごく重要です。レースに乗る騎手は体重が50kg台ですが、普段の調教をつける「調教助手」の方は60kg〜70kgあることも珍しくありません。
体重の重い助手が乗って良いタイムを出している場合は、レースで軽い騎手が乗ればさらにパフォーマンスが上がる可能性が高いと評価できます。
3. メディアの「A・B・C評価」を疑う
スポーツ紙や専門紙では、調教に「A」や「B」といった評価がついていますが、これを鵜呑みにするのは危険かも、と私は思っています。
一週前は「C」だったのに、レース直前になって陣営の強気なコメントなどを受けて、こっそり「A」に修正されているようなケースもあるからです。記者の評価に頼り切るのではなく、自分自身の目でタイムの推移やラップの踏み方を確認することが、穴馬を見つける近道になります。
まとめ:競馬の追い切りとは馬の総合評価
いかがでしたでしょうか。競馬における「追い切り」とは、単なるタイムトライアルではありません。
調教師やスタッフが、馬の体力的な限界を見極めながら、心肺機能を高めつつ闘争心をコントロールするという、本当に緻密なチューニング作業の集大成なんです。
追い切りから馬の状態を評価するためのポイントを最後におさらいしておきます。
- 最終追い切りのタイムだけを見ず、1週前からの「過程」を見てピークがコントロールされているか確認する
- トレセンの改修による高速化を理解し、全体時計よりも「ラスト1ハロン・2ハロンの加速」を重視する
- コースの内外の差や、乗り役の体重の違いなど、数字には見えない背景を想像してタイムを割り引いたりプラス評価したりする
これらの視点を持って調教欄を眺めてみると、今までとは全く違った景色が見えてくるかなと思います。もちろん、追い切りが良くてもレース展開などで結果が出ないこともありますが、馬の能力や今の状態を客観的に判断するツールとして、これほど強力なものはありません。
ぜひ、今回ご紹介した基準や見方を参考に、自分なりの追い切り評価スタイルを見つけてみてください。競馬予想がもっと奥深く、楽しいものになるはずですよ!
