「競馬で生きていく」という言葉には、好きなことで自由に暮らす、という魅力的な響きがあります。SNSを開けば、競馬生活で月収300万円を達成したという話や、副業競馬で月50万生活を送る猛者の姿が目に映るかもしれません。しかし、実際に競馬で生活してる人、いわゆる馬券生活者の現実は、それほど華やかなものばかりではありません。彼らの年収や、馬券生活者としての買い方は、決して「超鉄板軸馬」を見つけるといった単純な予想に頼るものではないのです。そこには、中央競馬と地方競馬の両方に通じる、徹底したデータ分析と、見過ごされがちな競馬で生活する上での税金の問題が横たわっています。この記事では、競馬で収支をあげている人のやり方を解き明かし、その具体的な方法と、夢の裏にあるリアルな戦略と覚悟を解説します。
- 馬券生活者のリアルな日常と収入の実態
- 感情的な予想と論理的な分析の決定的な違い
- 競馬で利益を出し続けるための唯一の方法論
- 見過ごすと危険な税金に関する必須知識

「競馬で生きていく」ことの理想と現実
- 競馬で生活してる人のリアルな日常
- 馬券生活者の年収はどれくらいか
- 馬券生活者の買い方に見る共通点
- 月収300万や副業月50万生活は可能か
- 競馬で生活する上で必須の税金の知識
競馬で生活してる人のリアルな日常
まず初めに、競馬で生活してる人、いわゆる「馬券生活者」が、どのような日常を送っているのかを理解する必要があります。多くの人が想像するような、好きな時に起きて、レースを観戦しながら大金を稼ぐという自由気ままな生活とは、実態が大きく異なる場合がほとんどです。
彼らの日常は、むしろストイックな研究者や個人投資家に近いと言えます。レースのない平日は、過去の膨大なレースデータの分析、馬場状態や血統の研究、そして週末のレースに向けた情報収集に、1日の大半を費やします。それは、趣味の延長線上にあるものではなく、自身の資産を運用するための、極めて地道で孤独な作業です。
レース当日は、感情の揺れ動きを極力排除し、事前に立てた戦略とルールに基づき、淡々と投票を繰り返します。一つのレースの勝ち負けに一喜一憂することはなく、全ての投票を「期待値を追う」という長期的な視点での業務と捉えているのです。そこには、華やかさよりも、厳しい自己規律と論理性が求められます。

馬券生活者の年収はどれくらいか
「競馬で生きていく」と考えた時、多くの人が最も関心を持つであろうテーマが、馬券生活者の年収でしょう。しかし、この問いに対する答えは、一般的な職業のように「平均年収は〇〇万円です」と単純に示すことはできません。なぜなら、彼らの収入は会社員のような給与ではなく、極めてリスクの高い事業から得られる「事業利益」に近いからです。
結論から言えば、その金額は個人のスキル、資金力、そして精神力によって、ゼロ、あるいはマイナスから、数千万円以上まで、極端な幅を持ちます。年間の収支がプラスになる、つまり回収率が100%を超えるだけでも、全競馬人口の上位5%以内と言われる厳しい世界です。その中で、安定的に生計を立てるレベルの利益を出し続けるとなると、さらにその中のごく一握りの存在となります。
年収を決定づける3つの要素
馬券生活者の年収は、主に以下の3つの要素の掛け算によって決まります。どれか一つでも欠けていれば、生活を成り立たせることはできません。
- 技術(年間回収率): 期待値の高い馬券を見つけ出し、最終的な回収率をどれだけ高く維持できるかという、馬券購入におけるスキルそのものです。回収率が105%か110%か、このわずか5%の違いが、利益を2倍にするほど重要な要素です。
- 資本(投資元本): どれだけ高い回収率を誇るスキルがあっても、投資するための元本(軍資金)がなければ、大きな利益を生むことはできません。資本の大きさが、年収の上限を決めると言っても過言ではありません。
- 精神力(リスク許容度): 競馬の収支には、必ず「波」が存在します。数ヶ月単位でマイナスが続く不調期(ドローダウン)に耐え、冷静に自分のルールを守り続けられるかという、強靭な精神力が求められます。
回収率と投資元本から見る年収シミュレーション
前述の通り、重要なのは、年収という結果だけでなく、その利益を生み出すための「投資元本」がどれだけ必要かという視点です。ここで、年間回収率と年間投資額別に、税引前の年間利益がどう変わるかをシミュレーションしてみましょう。
| 年間回収率 | 年間投資額 | 年間利益(税引前年収) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 105% | 1,000万円 | 50万円 | プロとして最低限のライン |
| 105% | 6,000万円 | 300万円 | 生活費を稼ぐレベル |
| 110% | 1,000万円 | 100万円 | 高いスキルを持つレベル |
| 110% | 3,000万円 | 300万円 | 高いスキルを持つレベル |
この表から分かるように、仮にプロレベルと言われる年間回収率105%を達成できたとしても、一般的な会社員程度の年収300万円を稼ぐためには、年間で6,000万円もの馬券を購入する必要があるのです。これだけの資金を常にリスクに晒し続ける覚悟がなければ、馬券生活は成り立ちません。
月単位の収入は「赤字」が当たり前という現実
もう一つ、絶対に理解しておくべきなのが、年収という言葉が持つ安定性の幻想です。年間回収率が110%だとしても、それは毎月コンスタントに10%の利益が出ることを意味しません。
実際には、「3ヶ月連続でマイナス収支だったが、4ヶ月目に大きな的中があり、年間の収支をプラスにする」といった、極めて不安定な収支の波を繰り返すのが現実です。月単位で見れば、赤字になる月の方が多いくらいだと考えておくべきでしょう。
会社員であれば、たとえその月の営業成績が悪くても給料は支払われます。しかし、馬券生活者は、マイナス収支の月でも、容赦なく生活費は出ていきます。この精神的なプレッシャーの中で、冷静な判断を維持し続けることこそが、馬券生活における最も難しいスキルなのかもしれません。
したがって、「馬券生活者の年収はいくらか?」という問いへの最も的確な答えは、「彼らのスキル、資本、そして何ヶ月もの不調に耐えうる精神力によって、青天井にもなれば、マイナスにもなり得る」ということになるのです。

馬券生活者の買い方に見る共通点
では、年間の回収率100%超えという、極めて厳しい世界で結果を出し続ける馬券生活者の買い方には、どのような共通点があるのでしょうか。特定の必勝法や、誰にでも通用する魔法のような理論が存在するわけではありません。しかし、彼らの馬券に対するアプローチ、すなわち「哲学」には、驚くほど明確で、かつ揺るぎないいくつかの共通原則を見出すことができます。
それは、一つひとつのレースを単なる勝ち負けのゲームとして捉えるのではなく、自身の資産を運用するための「投資活動」として捉える、極めて論理的な思考体系です。これから解説する4つの原則は、その思考体系を支える、いわばプロの行動規範と言えるでしょう。
原則1:期待値という唯一の判断基準
前述の通り、プロの馬券生活者が馬券を購入する際の判断基準は、ただ一つ、「その馬券の期待値がプラスであるか否か」という点に集約されます。彼らは、一般的なファンが問いがちな「このレースで、どの馬が一番勝つ確率が高いか?」という問いには、さほど興味がありません。
彼らが自問するのは、常に「この馬の本当の実力(勝率)と、現在の大衆の評価(オッズ)との間に、有利な歪みは存在するか?」という、より本質的な問いなのです。
例えば、レースに圧倒的な実力馬がいたとしても、その馬の単勝オッズが1.3倍であれば、勝率が77%以上なければ期待値はプラスになりません。プロは、その馬が77%以上の確率で勝つと判断できなければ、どれだけ強く見えてもその馬券を買いません。逆に、勝つ確率は10%程度しかない人気薄の馬でも、単勝オッズが15倍ついていれば、期待値は「1.5」となり、それは「買うべき価値のある馬券」と判断します。たとえ、その馬券が10回中9回外れたとしても、彼らはその判断を悔いることはないのです。
原則2:破産確率をゼロにする資金管理
どれほど優れた期待値計算の理論を持っていたとしても、それを実行するための徹底した資金管理がなければ、必ず破産します。これは、プロの世界における絶対的な鉄則です。彼らにとって資金管理とは、利益を増やすための攻撃的な手段ではなく、どれだけ長い不調期が訪れても、市場から退場しないための「防御」に他なりません。
多くのファンは、自信のあるレースで賭け金を増やし、負けが込むとそれを取り返そうとさらに大きな金額を投じてしまいます。これは、感情が論理を支配した、最も典型的な負けパターンです。プロは、このような感情の介入をシステムで防ぎます。
例えば、「1レースへの投資額は、総資金の1%を決して超えない」というルールを定めます。総資金が100万円なら、1レースの上限は1万円です。このルールを、たとえ日本ダービーであろうと、絶対的な自信のあるレースであろうと、機械的に守り続けます。これにより、連敗が続いても資金の減少は緩やかになり、精神的な安定を保ったまま、期待値の高い馬券を買い続けることができるのです。
原則3:優位性を確立する「専門分野」への特化
プロの馬券生活者は、全てのレースに手を出すことはありません。彼らは、自身の得意分野へ特化することで、他の多くの競馬ファンに対する「情報的・分析的な優位性」を確立し、それを利益の源泉としています。
現代競馬は情報化が進み、誰でも簡単に膨大なデータにアクセスできます。このような環境で、全てのレースを中途半端に分析していては、その他大勢のファンの中に埋もれてしまいます。そこで、プロは意識的に自身の戦場を限定するのです。
専門分野の具体例
- 条件特化: 「2歳新馬戦」「3歳未勝利戦のダート1800m」など、特定の条件に絞って、その条件の過去データを徹底的に分析する。
- 競馬場特化: 「福島競馬場の芝1200m」「新潟競馬場の直線1000m」など、特定のコースの専門家となり、そのコースの馬場バイアスや血統傾向を誰よりも深く理解する。
これは、医師が「内科」「外科」「眼科」と専門分野を持つことと同じです。自身の得意な領域で戦うことで、分析の精度と効率を最大化し、長期的に安定した優位性を築いているのです。
原則4:期待値がないレースは「見(ケン)」する勇気
そして、これら3つの原則を支える、最も重要で、かつ最も実行が難しい共通点が、「買う価値のある馬券がないレースは、迷わず見送る(見する)」という、徹底した自制心です。
多くのファンは、馬券を買うこと自体を目的としてしまい、「せっかく競馬場に来たから」「G1だから参加しないともったいない」といった感情から、期待値がマイナスであると分かっていても、つい馬券を買ってしまいます。これは、投資ではなく、単なる娯楽としての行動です。
しかし、プロにとって馬券購入は仕事です。彼らは、自身の定めた基準(期待値)を満たす投資対象が見つからない限り、決して資金を投じることはありません。たとえ、その日に一度も馬券を買わずに終わったとしても、それは「無駄なリスクを回避できた、良い一日だった」と判断します。
これらの共通点から見えてくるのは、彼らがギャンブラーではなく、自身の定めた厳格なルールに基づき、淡々と業務を遂行する、極めて論理的な「投資家」であるという事実なのです。ギャンブラーではなく、極めて論理的な「投資家」であるという事実です。

月収300万や副業月50万生活は可能か
SNSなどで見かける「競馬生活で月収300万円」や「副業競馬で月50万生活」といった言葉は、非常に魅力的です。理論上、そのような高額収入を得ることは不可能ではありません。しかし、これを実現するためには、これまで述べてきた論理的なアプローチに加え、さらにいくつかの厳しい条件をクリアする必要があります。
まず、圧倒的な資金力です。前述の通り、回収率110%で月収50万円(年間600万円)の利益を目指すなら、年間で6,000万円もの投資が必要です。月収300万円(年間3,600万円)となれば、その投資額は3億6,000万円にも上ります。これは、もはや個人のレベルを超えた、組織的な投資の領域です。
また、これほどの金額を市場に投じれば、自分自身の投票がオッズに影響を与えてしまい、期待値の高い馬券を買い続けることが困難になるという問題も生じます。
もちろん、ごく稀に、独自の優れた理論と強靭な精神力で、大きな成功を収める天才的な個人が存在することも事実です。しかし、それはプロ野球選手や人気俳優になるのと同じくらい、再現性の低い例外的なケースと考えるべきでしょう。安易に夢を見るのではなく、まずは着実に回収率100%を超えることを目指すのが、現実的なアプローチです。

競馬で生活する上で必須の税金の知識
競馬で生きていくことを考える上で、絶対に避けて通れないのが競馬で生活する上での税金の問題です。馬券の払戻金は、法律上「一時所得」または「雑所得」と見なされ、課税の対象となります。この知識がないまま大きな利益を上げてしまうと、後から追徴課税という形で、重いペナルティを課される危険性があります。
一時所得と雑所得の違い
| 区分 | 一時所得 | 雑所得 |
|---|---|---|
| 対象者 | 一般的な競馬ファン | 継続的に利益を上げている馬券生活者 |
| 経費として認められる範囲 | 的中馬券の購入費用のみ | 年間の全馬券購入費用(外れ馬券も含む) |
| 計算方法 | (払戻金 – 的中馬券代 – 50万円) × 1/2 | 年間総払戻金 – 年間総購入費 |
過去の裁判例では、年間を通じて継続的に利益を上げることを目的として馬券を購入している場合、その払戻金は「雑所得」と認められ、外れ馬券も経費として計上できる、という判断が下されています。しかし、この判断を得るためには、全ての馬券購入を記録し、それが事業的規模で行われていることを証明する必要があります。
いずれにせよ、年間で一定以上の利益が出た場合は、確定申告が必須です。税金の問題は非常に専門的であるため、不安な場合は税務署や税理士に相談することをお勧めします。これを怠ると、せっかくの利益が水の泡となりかねません。

「競馬で生きていく」ための具体的な方法
- 収支をあげている人のやり方と予想
- 予想の根幹をなすデータ分析
- 超鉄板軸馬という考え方の危険性
- 中央競馬と地方競馬の攻略法
- 唯一の方法は期待値を追うこと
- まとめ:「競馬で生きていく」ということ
収支をあげている人のやり方と予想
それでは、具体的に競馬で収支をあげている人のやり方とは、どのようなものなのでしょうか。彼らの予想プロセスは、週末にスポーツ新聞を広げて印を打つ、といった一般的なファンのそれとは、時間軸も思考の深度も全く異なります。それは、レースという週末の「点」で勝負するのではなく、分析と検証を繰り返す「線」のプロセスとして競馬を捉える、体系的なアプローチです。
一般的なファンは、「どの馬が一番強いか?」という視点で勝ち馬を探します。しかし、収支を上げているプロは、問いの立て方が根本的に異なります。彼らが探しているのは、「どの馬のオッズが、その実力に比べて『おいしい』か?」という、投資家としての視点に基づいた「価値」なのです。彼らにとって、予想とは勝ち馬を当てる作業ではなく、期待値の高い馬券、すなわち「割安な金融商品」を見つけ出すための、地道なリサーチ活動に他なりません。
プロの週間サイクル:レースは月曜日から始まっている
プロのやり方を理解するために、彼らの一週間の思考サイクルを見てみましょう。彼らにとって、週末のレースに向けた戦いは、前のレースが終わった直後、あるいは週明けの月曜日から既に始まっています。
【プロの思考・行動サイクル】
- 月曜~火曜:先週のレースの徹底復習
まずは、先週行われた全レースの結果を振り返り、自身の予想と結果がどう違ったのかを検証します。勝因・敗因分析はもちろん、馬場バイアスや展開の有利不利などを自身のデータベースに蓄積し、次の予想の精度を高めるための準備を行います。 - 水曜~木曜:特別登録馬の分析と候補選定
週末のレースに出走を予定している馬(特別登録馬)が発表されると、本格的な分析を開始します。過去のレース映像やラップタイム、血統などを基に、各馬の能力を客観的に評価し、「期待値が高くなりそうな候補馬」のリストアップを行います。 - 金曜:枠順確定後の最終分析
枠順が確定すると、展開のシミュレーションをより具体的に行います。どの馬が逃げ、どの馬が有利なポジションを取れそうか、馬場バイアスと枠順を考慮して、各馬の評価を最終調整し、自分なりの「適正オッズ」を算出します。 - 土曜~日曜:オッズ監視と最終判断
レース当日は、自分なりの分析は既に完了しています。彼らの仕事は、リアルタイムで変動するオッズを監視し、自分が狙っている馬のオッズが、自身の算出した「適正オッズ」を上回る、「買う価値のある」水準になるかを見極めることです。ここで期待値が見合わなければ、どれだけ自信があってもそのレースは見送ります。
「予想」の正体:自分だけの評価モデルを構築する
このサイクルの中で行われる「予想」の正体とは、「自分だけの評価軸(評価モデル)を持つ」ことに他なりません。新聞の印や世間の評判といった他人の評価に流されることなく、一貫した基準で、全ての馬を客観的に評価するための「物差し」を自ら作り上げるのです。
この評価モデルには、スピード指数、コース適性、血統、騎手、調教状態、レース展開といった、無数のファクターが組み込まれています。プロは、これらのファクターに独自の重み付けを行い、「今回のレース条件であれば、この馬の勝率は〇%程度だろう」という、客観的な確率を導き出します。
「買う」と「見送る」を分ける最終判断
そして最終段階では、その「自分だけの評価」と、「大衆の評価の集合体であるオッズ」を比較します。この比較こそが、プロとアマチュアの思考を分ける決定的な分岐点です。
| 思考プロセス | 一般的なファンの思考 | 収支を上げている人の思考 |
|---|---|---|
| 分析の目的 | 「勝つ馬」を探す | 「価値(期待値)のある馬」を探す |
| 判断基準 | 感覚、評判、新聞の印 | 独自のデータ分析、客観的な確率 |
| 最終行動 | 自信のある馬が見つかれば買う | 価値のある馬が見つからなければ買わない(見する) |
このように、収支を上げている人のやり方とは、時に大衆の意見と真っ向から対立し、孤独な判断を下すことを厭わない、強い精神力と、自身の分析に対する深い自信に基づいています。彼らにとっての「良い予想」とは、馬券が当たることではなく、期待値の高い馬券を見つけ出すという、合理的なプロセスを貫き通すことなのです。するため、強い精神力と、自身の分析に対する深い自信がなければ、続けることはできません。

予想の根幹をなすデータ分析
前述の通り、論理的な予想の根幹をなすのが、客観的なデータ分析です。感情や直感といった曖昧な要素を可能な限り排除し、数値化された事実に基づいて判断を下すことが、長期的に安定した成績を残すための鍵となります。
プロが注目するデータは、単なる過去の着順だけではありません。より深く、多角的な視点から、レースに影響を与えるあらゆる要素を分析します。
プロが重視するデータ分析の例
- ラップタイム分析: レース全体の時計だけでなく、1ハロンごとのラップタイムを分析し、レースのペースや、各馬の本当の能力を評価します。
- 馬場バイアス分析: 当日のレース傾向から、内外、前後、どのポジションが有利なのかという「馬場の偏り」を読み解きます。
- 血統・厩舎・騎手データ: 特定の条件下で好成績を収める血統や、特定の競馬場を得意とする厩舎・騎手の組み合わせなど、人間側の要因もデータとして分析します。
これらの膨大なデータを収集し、統計的に処理し、自分なりの予測モデルを構築する。この地道な作業こそが、彼らの予想の精度を支える土台となっているのです。

超鉄板軸馬という考え方の危険性
競馬初心者や、なかなか勝てない人が陥りがちなのが、「絶対に勝つであろう超鉄板軸馬を見つけて、そこから手広く流す」という考え方です。確かに、圧倒的な1番人気馬は勝つ確率が高いですが、その馬を軸に馬券を買い続ける戦略には、大きな危険が潜んでいます。
最大の理由は、そのような馬は期待値が極端に低いからです。誰もが「鉄板」だと考えるため、オッズは必要以上に低くなります。単勝1.2倍といったオッズは、その馬の勝率が83%以上でなければ、期待値はマイナスです。どれほど強い馬でも、レースには常に不確定要素がつきまといます。8割以上の確率で確実に勝つ、ということはあり得ません。
また、「鉄板軸馬」が万が一負けた場合、その損失を取り返すのは非常に困難です。手広く馬券を買っていれば、投資金額も大きくなりがちであり、一回の不的中で、それまでの小さな利益が全て吹き飛んでしまうリスクを常に抱えています。
競馬で勝ち続けるためには、「当たる確率の高さ」と「馬券の価値(期待値)」を、明確に区別して考える必要があります。「超鉄板軸馬」という甘い幻想を捨て、全ての馬を期待値という冷静な物差しで評価すること。それが、プロへの第一歩です。

中央競馬と地方競馬の攻略法
競馬で生きていくことを考えるなら、週末に行われる中央競馬(JRA)だけでなく、平日にほぼ毎日開催されている地方競馬(NAR)も視野に入れる必要があります。しかし、両者は似て非なるものであり、それぞれに異なる攻略法が求められます。
| 項目 | 中央競馬(JRA) | 地方競馬(NAR) |
|---|---|---|
| 特徴 | レベルが高く、情報量も豊富。馬券の売上が大きく、オッズが安定しやすい。 | 馬の実力差が大きく、情報が少ない。売上が小さく、オッズが変動しやすい。 |
| 攻略のポイント | 膨大なデータをいかに深く分析できるか。オッズの非効率性(歪み)は小さい。 | 少ない情報から、いかに有利な馬を見つけ出すか。オッズの歪みが大きく、高配当が出やすい。 |
中央競馬は、いわば「情報戦」です。全てのファンが同じデータにアクセスできるため、他者を上回る深い分析力がなければ、優位性を築くことは困難です。一方、地方競馬は、情報が少ない分、熱心に現地の情報を集めたり、独自の分析手法を確立したりすることで、中央競馬よりも大きなオッズの歪みを見つけ出せる可能性があります。
どちらか一方に絞るのか、あるいは両方を攻略対象とするのか。自身の分析スタイルや生活リズムに合わせて、主戦場を定める戦略的な視点も必要となります。

唯一の方法は期待値を追うこと
ここまで様々な角度から解説してきましたが、競馬で生きていくための唯一絶対の方法を一つだけ挙げるとするならば、それは「期待値の高い馬券を、規律正しく買い続けること」に尽きます。
競馬は、短期的に見れば運の要素が大きく絡む、不確実性の高いゲームです。しかし、試行回数を重ね、長期的な視点で見れば、その結果は数学的な確率、すなわち期待値に収束していきます。これは、サイコロを何千回も振れば、各目の出る確率が限りなく6分の1に近づいていくのと同じ、大数の法則です。
あなたの仕事は、レースを的中させることではありません。あなたの仕事は、レースが行われる前に、オッズと、あなたが算出した「本当の勝率」を比較し、期待値がプラスになっている馬券を見つけ出すことです。そして、その馬券を、事前に定めた資金管理ルールに従って、淡々と購入する。ただ、その繰り返しです。
たとえ、そのレースが外れても、次のレースで感情的になってはいけません。なぜなら、あなたの行動は、長期的には必ずプラスのリターンを生むと、論理的に確信できているからです。この「期待値を追う」という行為に対する、揺るぎない信念こそが、あなたを支える最大の精神的支柱となります。
まとめ:「競馬で生きていく」ということ
- 競馬で生きていくとは趣味ではなく規律正しい職業的活動
- 馬券生活者の日常は地道なデータ分析と研究の繰り返し
- 安定した年収は保証されず大きな元本とリスクを伴う
- 月収300万といった話は再現性の低い例外的なケース
- 競馬で生活する上で税金の知識と確定申告は必須
- 収支をあげている人のやり方は期待値の追求に尽きる
- 予想の根幹は感情を排した客観的なデータ分析である
- 超鉄板軸馬は期待値が低く長期的な勝利には繋がらない
- 中央競馬は情報戦、地方競馬は情報の非対称性が特徴
- 唯一の方法は期待値がプラスの馬券を買い続けること
- そのためには自分だけの評価軸を持つ必要がある
- 馬券生活者の買い方は投資家のそれに極めて近い
- 感情をコントロールし資金管理の鉄則を守ることが大前提
- 必要なのは必勝法ではなく論理と規律と揺るぎない信念
- これは夢物語ではなく極めて現実的なビジネスアプローチ
